1 つまずきポイント
① 垂直や平行の線を三角定規でうまく書けない。
② 斜めの直線に対して、垂直や平行な線が引けない。
③ 色々な四角形の分類ができない。
④ 平行四辺形やひし形が正確に書けない。
2 攻略ポイント
① 赤ペンと青ペンで視覚的に支援
垂直や平行の意味を理解することは難しいことではない。しかし、それを作図するとなると、ぐっと難易度が高まる。日本の三角定規をどのように合わせれば良いか分からない子には、
『三角定規の変を油性ペンで赤と青に塗る』
という方法が有効である。これにより、視覚的に三角定規の組み合わせ方が分かる。
教師が指示する際も
「青と青を合わせます。」
「赤の返を線で引きます。」
これだけで作業が理解できる。
また、新村勲氏の旧TOSSランドのサイト(垂直→No.1123253 平行No.1123251)を同時に使用するとより分かりやすい。アニメーションによって、どのように三角定規を動かせば良いかが、理解できる。
さらに、垂直と平行の三角定規の組み合わせ方が分からない子には、
「垂直はヨットの形、平行はエレベーターみたいに動かす。」
とイメージ語を使うことで、やり方を覚えられるように声かけを行った。
② 問題を回転させる。
基本的な垂直や平行のやり方は身に付いても、実際の問題では、元にする直線が斜めだったりする場合が多い。苦手な子にとっては、直線が斜めになっているだけで、全く異次元の世界になる。そこで、元になる線が斜めになっている場合には、
「問題自体を回転させるようにする。」
ということを教える。これだけで今まで見たことがなかった形も、これまで通りに解くことができる。
③ フラッシュカード&定義を逆から言わせる。
この単元で出てくる四角形は、正方形、長方形、台形、平行四辺形、ひし形、ただの四角形である。
新しく出てきた台形、平行四辺形、ひし形の用語と定義がしっかり頭に入っていないと、分類は決してできない。
まずは、正進社のフラッシュカードを使い、繰り返し練習することが有効である。ない場合は自作のフラッシュカードでも構わないので、用語をしっかりと頭に入れる。
その上で、必ずやるべきは、定義を逆から言わせる活動である。
T「向かい合う1組の返が平行な四角形をなんといいますか?」
C「台形です。」
T「台形を何と言いますか?」
C「向かい合う1組の返が平行な四角形です。」
これを列指名、男女交代、全員など変化を加えながら質問する。
長い時間やるというより、授業の開始1~2分でやるイメージ。
時々、ふと気づいたように子どもに質問すると子どもたちもゲーム感覚で覚えていく。
④ 平行四辺形やひし形が正確に書けない。
作図が苦手な子の多くは手先が不器用な子が多い。そのような子たちにとって、一番大切なことは、練習時間の確保である。正しい作図の仕方を教えたら、様々な形を作図させた方が良い。この際、ノートにたくさん練習しても良いが、必ず教師のノートチェックがいる。
「教科書73、⑦の平行四辺形が書けたら先生のところに持って来ます。」
このような指示を出し、正確に書く事ができているか、確認していく。これをしないでたくさん練習しても、毎回長さのずれた作図をただ書いているだけで力はつかない。
また、苦手な子が作図のどの部分でつまずいているかを教師は見取る必要がある。例えば、コンパスの使い方ができていないのか、定規が上手く使えないのか、平行がまだ上手く書けないのか、長さを読み間違えるのか、様々な要因が考えられる。その子のつまずきを見た上で、その部分を支援していく必要がある。私の場合、平行四辺形の平行が上手く書けない子には、まずはあかねこ計算スキルを使い練習をする。この教材では、平行になる直線と交わる点が3つくらい選択肢として薄く書いてある。これにより、苦手な子が平行な線を書く際の助けになる。このように、その子のつまずきに応じて手だてを打っていく。
さらに、平行四辺形の作図に関しては、2種類の作図の仕方が主に教科書では提示されている。どちらもできた方が良いが、どうしてもコンパスの作図が苦手な子には、三角定規の書き方を優先して教える。逆に、三角定規では上手くいかない子は、コンパスのやり方をまずしっかりとできるようにさせていく。これまで出会った子の中では、比較的コンパスの方が簡単にできる子が多かった。
3 授業の考察
この単元は、授業進度を速めて進めることが比較的できる単元である。垂直や平行などの新しい用語が出てくるが、これを1日で覚えさせるというよりは、毎日繰り返し、子どもたちに質問をしたり、フラッシュカードで復習をしていくことで定着させていく事が望ましい。授業の進度を速めた上で、生まれた時間によって、子どもたちが苦手とする作図の練習にしっかりと時間をとることで定着がしていく。また、三角定規やコンパスを使う単元だからこそ、事前に保護者にもお願いをして見やすい三角定規や壊れにくいコンパスを用意するように連絡すると良い。また、それでも用意できない子のために、教師用でいくつかの道具を用意しておくと、授業で子どもがすることがない状態が生まれない。
【参考文献】 算数授業の新法則4年生編、トークライン2016年6月号 川田啓輔氏論文、山口県の河田先生学級通信